第972回 「断捨離と棚卸」
私達人間が「コロナ…、コロナ…」と明け暮れていても、季節は規則正しい移ろいを続けています。
いつの間にか桜の開花ニュースが、伝えられるようになり、重いコートが不要になってきました。週末の朝のTVでは、片付けの専門家(最近は、いろんな専門家が活躍していますね。)が、衣替え後の収納を手際よく行うノウハウを教授していました。その中に「来年は使用しないと思われる物は、捨てる。捨てるかどうかは3秒で決める。迷ったら捨てる。」と、言う発言がありました。
その時の私は、目は新聞の紙面を追いながら、TVからは音声が流れるまま放置している状態でしたが、その言葉が耳に入り、思わずTVに見入ってしまいました。断捨離ブームでいろんな情報に触れることがありますが、「3秒で決める」と、言うのは初めて聞くような気がします。私なら、1分後には後悔しそうな気がしました。しかし、モノに限らず捨てる行為には、確かに思い切りはポイントのようです。人は、自分の人生の時間の中で旬を迎えたことのあるモノには愛着を持ってしまい、なかなか捨てられません。しかし、時間の経過と共に環境は内外共に変化を迎えます。環境の変化に伴い、そういう旬の時代を持つモノの出番は、恐らく二度と訪れることはないのです。
ですから、直ぐに捨てなければならないモノはそれらなのです。なかなかこの決断ができないのが人情です。それを3秒で決めろとは、もしかしたらそう言う愛着があって捨てられないモノだからこそ、目を瞑って3秒で決断すべき、と言うのかもしれません。ところで断捨離で捨てるべきモノは、物理的存在のある物だけではありません。
何か新しいことに挑戦しようと試みても上手くゆかない時は、自身が囚われて縛りを感じている考え方や、習慣などを棚卸してみると、見直すべきものが見つかるかもしれません。思い切って捨ててみると、新しいことに挑戦できるかもしれません。一日の時間に余裕がなく、時間貧乏と嘆いているなら、暮らし方や時間の使い方を棚卸すると、さしたる理由もなく時間を費やしている習慣に気が付くかもしれません。仕事も同様です。仕事が追いつかない、仕事が遅いと言われる人を、客観的に眺めると、意外と無駄な作業に時間を費やしていることが多いものです。
いつも悩みの種になる人間関係こそ断捨離のターゲットです。自分の人間関係から締め出してしまって、付き合わないわけにはいかないケースもあります。しかし、自分の中で自分にとっての大切さ程度を棚卸し、自分の心の向け方を整理することですっきり出来ます。職場でも、習慣だからと継続して行っていたことを、棚卸してみると、意外と不要なことや、実態にそぐわないどころか弊害となっていること等を、見つけ出せそうです。恐らく職場の組織体制や、業務慣習も定期的に棚卸し、時宜に応じて再整理すべきなのだろうと、感じています。