第773回 「リスクに怯えない」
今朝の朝礼当番と、当番の発言内容へコメントをするスタッフは、
少し興味深い会話をしていました。
朝礼当番は、“トヨタが東京オリンピック・パラリンピックに向けて、
新たに開発したタクシー専用車両を公開した”話題を取り上げました。
そして、従来タクシー車種は殆ど改良がなされず、数十年も同じ仕様のままの利用
であったが、それは安定したモデルを使い続ける事が、利用者にとって安心心理が
働くからであろう。
今回の新型車の投入やフルモデルチェンジ案は、タクシー業界並びに利用者にとっ
て画期的なことである。何事も安心だけに甘んじるのではなく、進歩を遂げるには
新しいことに挑戦すべきである。と、言うような感想を述べました。
一方、この意見への感想を求められたコメンテイター役のスタッフは、新しいもの
に挑戦するにはしっかり検証して、十分に安心・安全を確かめた後に実施する必要
がある、というコメントを述べました。
こういう風に文字にすると、どちらも正解です。でも、仕事の場や人生においてど
ちらを優先させるべきか、と問われると、私は前者を選びます。
これには、多分に性格特性も影響するとは思いますが・・。
私はリスクを取って挑戦することは、成長効率を高めると、思うからです。現状維
持では、小さくまとまってしまいます。やはり、絶えず試行錯誤を繰り返しながら
前へ進むことが、大切だと思うからです。しかし、むやみにリスクを取れば、当然
危険も大きくなります。
リスクにはリスクの取り方のセオリィがあり、賢くリスクを取る工夫が必要です。
冷静にリスクを分析すると、メリットとデメリットが抽出されます。
十分なメリットが認められれば、覚悟を決めてリスクを呑み挑戦します。それでも
危険が大きすぎると不安を覚えるなら、リスクを細分化することも出来ます。
細分化されたリスクは、危険も細分化されますので、カバー可能かどうかを見極め
挑戦する事が出来ます。
また、計画をいくつか準備するのも王道です。先ずは第一案に挑戦するが、駄目か
も知れない場合は第二案を採用するなど、の柔軟な取り組み方法があります。
ところが、こういう取り組み以前のところで、経験が少ない若い人たちは、やたら
不安がって行動を尻ごみする傾向にあります。やたら不安がるその内容を聞いてみ
ると、上司や先輩の顔色ばかりが気になるようです。
先輩やリーダーに叱られることや、指摘を受ける事が不安で行動が起こせない。先
輩達との取組み方の違いを見咎められるのが不安である。酷い場合は、何が不安か
わからないけれど体験していないことは不安だ、というように立ち竦んでいます。
それは常識の枠からはみ出すのではないかと、恐れることから生じるようです。
その結果彼らの思考は、不確実あるいは不明瞭なものをそのまま漠とした不吉な
リスクの塊にイメージします。
このようにして、自分本位のネガティブなバイアスで、
あたかも“知らないことはリスク”と言う定義をし、“知らないこと=リスク”を
大きな脅威の如くにしてします。
その結果、何か新しい行動を起こす時には、否定思考を働かせる習慣を作り上げて
います。つまり、よく彼らが口にする「自分には無理、出来ない」などです。
そのままだと、成長へ辿り着くには膨大な時間が掛かるか、
永遠にたどり着けませんよ。イメージから湧き出す感情に任せるのではなく、
冷静に自己を観察し、マイナス感情を排して、
自分の目標にとって幸いとなる行動を選ばなくてはなりません。
失敗や人に笑われることを怖がってはダメです。失敗を重ねることは、
成長への早道です。そのためには、前回のテーマに重なりますが、自分の思考に
一本筋の通った軸を持たなければ、冷徹な思考の下でのリスクは取れません。
そして、自らの行動の軸となる思想は、自分の人生の目的、価値観、目標、
をしっかり考えることから形成されます。