第779回 「自らが自らを育成する」
毎年のことですが、年が改まると新年度へ向けて気持ちが、はやり始めます。そうすると、今年度遣り残しになりそうな事柄が気になり始めます。
遣り残しの中で最も大きな課題は、若手スタッフの育成問題です。
4月には新たな新人が入社してくるのだが、
今年の新人達を含めて育成の必要なスタッフばかりになってしまう!
稼げる人が少ない!
と、嘆きながらも先輩スタッフ達は根気良く若手スタッフの育成に取組む様子です。
経験の少ないスタッフに、教育のつもりで取組ませた結果、
思うような成果が上げられなかったことを悔やむ中堅スタッフは、次のような発言をしています。
「今年度は、スタッフの特性を理解しながら指導する事に関して勉強ばかりになってしまった1年になりました。自分の行動を反省し、次回に活かせるようフォローをつづけます。『人を教育する』という事は、ものすごく難しいと最近考えさせられます。」
確かに何を遣らせても上手くやり遂げられない若手スタッフに苛々しながら、
もっとしっかり育成しなければ!育成の方法が間違っているのでは?
と、考えてしまい勝ちになります。
一方、今の自分がどうやって出来上がったかを思い浮かべてみてください。
社会の事を何も知らず入社してきたあなた方は、どうすべき、どう振舞うべきかと、考えましたね?
方法がわからないので先輩達の言動を必死で見様見真似しましたね。
真面目な人は、先輩達の言動に自分が求める正解が無い、と感じた時には書籍を購読しましたね。
いずれも、自らが伸びようとする気持ちに押された行動でした。
ですから、先輩達からの僅かなアドバイスや漏れた言葉の端々を敏感に察し、
乾いた砂に零した水が染入るようにグングン吸収しました。
また、中には、新人の頃は順調でなかった人も少なからずいますね。
業界の専門知識、技術に馴染みが薄く、同期仲間に比べて理解が遅く業務が捗らないように感じ、
そのことを直接先輩や上司から評価指摘されずいぶん苦しい思いをした人もいます。
あるいは、組織の中での行動習慣や時間軸、仕事の遂行に馴染めずに精神を痛めた人もいます。
そういう人たちは、何とか慣れよう、何とか遣っていかなくては、
自分の人生を始めたばかりで自分の人生を曲げるわけには行かない、と必死で頑張ったはずです。
このように、自らが伸びようとする、自らの人生を掴もうとする自主性、
自立性があなたがたを育ててくれています。
ですから、若手スタッフの育成について考えると、
「教育する、指導する」というのは違うと、私は考えます。
教育するのではなく、彼らが自ら伸びようとする力に手を添える、
曲がりそうになったら真っ直ぐ向くようサポートするだけで良いはずなのです。
教師ではなく、仲間としての立位置にある私たちの使命は至ってシンプルです。
私たちは、仲間愛故に彼らが社会人として不幸にならないように、
そして、チーム仲間の存続のためにチームの成果が高められるよう、
自分の知っている範囲を教えることだけだと、思います。
しかしながら、残念なことに最近入社してくる新人達は、自分で伸びる意識が乏しい、あるいは、
自分で伸びる意識が殆どなく他者が育ててくれるものだ、と普通に思っている人たちが居ます。
就職したことを自らの人生形成だと考えていない、当事者意識の乏しい人たちです。
同時に、彼らの中には自分の心に対してとてもナイーブな感性を持っている人たちもいます。
そのナイーブさが、自らの成長のために自らを鍛えることの障害となっている場合もあります。
そういう人たちに自らを伸ばす気持ち、当事者意識を持たせるには、
とても労力を要し、技術的にハードルが高いものです。
悩むのは、その点ですね。しかし、悩めば悩むほどに自分にとって大きな成長エンジンに変わります。
自己の成長に目を向けて、悩みながら根気強く思考錯誤を繰り返しましょう。