第782回 「マネージメントサイクルに則る“捨てる”」
私たちが従事するコンピュータシステム構築業務には、特異な事象があります。
新規システム構築のケースもありますが、
より多い業務依頼は稼働実績を持つシステムの改修や、
置き換えや、新規機能追加です。
置き換えと言うのは、
新しいIT技術や最新のハード・ソフトへ稼働実績を持つ
“枯れたしくみ”を移植する業務を言います。
“枯れたしくみ”と言うのは、業界特有の言い回しですが、
障害が起こらずハンドリングに手馴れた、
つまりユーザーの手に馴染んだしくみを言います。
冒頭特異な事象と呼んだのは、
改修や新規機能追加において生じるケースに起こる事象です。
改修や新規機能をどのように実装するのかを検討すると、
理論上は整然とした設計が可能にも拘らず、
何故か迂回の仕組みを実装することになります。
迂回と言うのは、極力稼動実績を持つしくみ部分には手を加えず、
改修機能や追加機能だけを追加する為、無駄な回路が生じる仕組みを指します。
この仕組みは、理論上の整然とした仕組みとは異なり、
稼動実績を持つ仕組みに“こぶ”をくっつけるような感じになります。
ですから、長時間の稼動実績を持つシステムほど“こぶ”が増え、
時には“こぶ”に“こぶ”がくっつき非常に複雑になります。
こういうシステムは、障害対応などには、大変厄介、非効率で難度が高くなります。
長屋が立て込んだ狭い路地に無計画に建て増しを実施する、
又はバラックを建てるので、路地が迷路状態となり、
消防自動車も通れない、そんな感じです。
何故このような事が起こるのかと言いますと、
うまく動いているシステムを捨てることに抵抗を感じるからです。
新しい仕組みにしてしまった時に生じるかもしれない障害を恐れる気持ち。
そして、上手く機能しているしくみは、作り守り続ける人の汗水が結集した資産です。
その資産を捨てるには、勇気を要し、怯んでしまうのだと、思います。
気持ちは、とても良く理解できます。
ひところ“断捨離”などが一斉を風靡しましたが、
捨てるのは人間の所有欲に反する行為であるため、
自己矛盾が起こりかなり強い勇気がなければ実践できません。
一方、新しいものを構築する、
収容するには旧いものを捨てる必要がある場合が、多くあります。
人が暮らす環境は、内部も外部も変化します。
以前の環境が消滅してしまう場合や、
外部環境の変化に併せて内部環境が変わる場合、
新しく追加構築する必要のある外部環境が生じる場合、
など変化には多様なケースがあります。
私などは、外部環境の変化だけではなく、本を読めば実践してみよう、
人の話しを聞けば変えてみよう、などしょっちゅう内部も振れていますので、
毎日の生活の仕組みをしょっちゅう変えざるを得ません。
そもそもシステムでも、日々の暮らしでも、
なにやら一杯つまったギュウギュウの状態は、非効率であり、見苦しいです。
モノでもシステムでも人の暮らしでも、
シンプルで整然と美しいものは、機能的です。
恐らく旧いものを捨てる、新しいものを取り入れるは、
マネージメントの行為でありPDCAのサイクルを廻らし管理する過程の行為のようです。
“C”チェックしてみる、その結果”捨てる必要がある”を評価実施し、
次の新しい行動計画に繋げる、そういう一連の行為の中で生じる行為です。
そのように考えると、捨てることには格別の勇気は、不要のように思われます。
無駄と思えるコト・モノ、あって邪魔になるコト・モノ、
整然としない複雑なコト・モノは、第三者的チェックの目線で評価し、捨てるべきのようです。