第850回 「学びは仕事から」
地震に続いて豪雨による被災、近畿地方は続けて電車などの公共交通機関の乱れに大混乱です。
私の会社のスタッフも、地震の折に電車閉じ込めに遭った人たちは、豪雨の今回も同様に閉じ込めや、締め出しを喰らっています。
とは言え、電車が不通になることや、遅れるくらいは命に関わるではなし、せいぜいストレスと疲れが貯まるだけです。
一方、豪雨災害は日本の国土のきっちり西半分を襲い、各地に甚大な被害をもたらしました。
未だにニュースでは、毎日のように被害を受けた人の数が増え続けています。
年々自然の脅威が増してくるように感じられるなか、従来災害による被災体験を持たない人々の被災も多くなりました。
今回の豪雨による被災も、これまであまり経験したことのない地方の人々の被災が多かったように感じました。
あまり被災の体験を持たない人々は、被災慣れと言うのは変ですが、
体験者に比べると、混乱度が高く二次被害に繋がり易かったのではないのだろうかと、推測します。
何故なら、人間は体験からしか学ぶ事が出来ないと、私は考えるからです。
被災時のマニュアルが準備されており、それを事前に勉強し記憶していたとしても、
私だったらとっさにはどう振舞うべきか思い浮かべられず、動顚していただろうと、思います。
学校で学ぶこと、セミナーや研修を受講して机上で学ぶことは、大概正しい手法を学びますのでとても有益です。
一方、机上学習だけで十分習得したつもりになるのは、大間違いだと、思います。
災害の場合は、体験して習得するのでは遅過ぎるので、訓練と言う手法で疑似体験を通して学習効果を定着させようと繰り返し試みられるのです。
机上学習だけでは、何事も身につける事が出来ない例は、新卒社会人に端的に表れています。
私の会社の新卒採用は、専門学校や大学で情報技術について学んだ人を採用します。
新卒で入社してきた新人が直ぐに戦力になってプログラムを書くことや、システム構築業務の遂行が出来るのか、と言うと殆ど無理です。
彼らが知っているのは、プログラムの書き方であったり、システム構築業務の知識だったり、です。
何が不足しているのかと言うと、一言で言うのが難しいのですが、実際の業務遂行には、技術知識やスキルとそれを覆う現実への対応力との双方が必要です。
そして、品質の良い仕事の成果には、必ず後者が大きく影響しています。
良い仕事をする人は、絶対に後者スキルの優れた人です。
この現実への対応力は、体験を通じてのみ身に付けることの可能なスキルです。
なかにはたまに体験せずに身に付けることの出来る人がいるかもしれませんが、非常に稀です。
そういうわけで、体験実績のない新人には、この重要なスキルが育成されていません。
例えば、新入社員が実務のプログラム作成業務に始めて関わった場合に、最初にダメだしを貰うのは、「プログラム仕様書には書かれていないけれど、配慮するのが当たり前の機能の漏れ」です。
これは、遣ってみなければわかりません。先日、若いスタッフの週報に次のような文章がありました。
「ここ連日の災害で、よく携帯の緊急速報が鳴ります。 そこで、地震と雨の警報で音が同じで分かり辛いと感じました。ユーザー目線で感じたときの感覚はこのようなものだと気付き、それは今作っているシステムでも同じだと考えます。今作っているシステムも、実際に使う場面をイメージしながら設計、開発を行うことが重要です。」
彼は、自分の体験から業務への学びを得ました。このことは、情報技術に限らず、
総ての職業で言えることです。人は学校や授けてもらった教育で成長するのではありません。
学校や教育は基本知識や姿勢を植え付けてくれます。
その後、自ら体験して気が付き、身に付けていくことで成長していくのです。
そういう意味では、仕事は学びの場です。自身の成長への意識を高く持つ限り体験に無駄はなく、
全てが学び・成長へと繋がるのです。