第852回 「自分の芯」
暑い日が続いています。このところ、人に会う毎に挨拶代わりのように「暑いですね~、この暑さ何時まで続くのでしょう。」ばかりを口にしている気がします。
昼過ぎビルの上部に取り付けられている温度表示板を見ると「38℃」とありました。この表示に、
私の脳は身体より先に反応し、暑さを感じるよりも気分のほうが、くらくらしてきました。
クーラーの効いた屋内に落ち着き、冷静になると、意気地ない自分を恥じ入りました。
眼の前の出来事・事象に少なからず影響を受け、本来の冷静な心を忘れ勝ちになってしまう、喉元を過ぎると反省するのですが、繰り返すような気がします。
恥ずかしながら本能が全く知性を上回っていますね。
社内でも、何度も遅刻を繰り返す人、遣ってはならないことを繰り返す人、など「分かっているけれど、でも出来ない人」を見かけることがあります。
人間の価値の一部は、この感情をコントロールする自己制御力の強弱によって評価されます。
一般的により強くコントロールできる人を世間は高く評価します。
若い人ほど、自分らしさを大切にする傾向が強い余り、ややもするとルールから外れ勝ちです。
自分らしさを大切にすること事態は、とても素晴らしいことなのですが、
組織の中の秩序を保つためには、ある程度守らなければならないルールがあります。
こういうルールは、組織のパフォーマンスを上げるために設けられたものです。
ルールに違反する人は、自己の本能に従うためにはルールが邪魔であると感じるや、自己の本能を押さえてルールを守ることに嫌悪を感じるからなのでしょう。
しかし、ルールを守ることが、自分の組織の生産性を高め、より高い組織の利益を招くことであることに思いが至ったら、恐らく素直にルールを守ることが出来るでしょう。
こういう思いに至るためには、少し遠くの視点から視線の輪を広げて物事を捉えるようにするのです。そうすると、ルールの根源にある考え方の芯が見えてくるのです。
考え方の芯は、理念と呼ばれるかもしれません。組織のルールだけではなく、人としての倫理・道徳観も同様です。人間社会や日本社会にとって、そこに属するみんなの公平な利益になるよう設定された考え方が倫理観です。
そういう風に考える事が出来ると、人へ気配りや勝手な行動も減って、みんなが暮らしやすい社会になると思うのですが・・。
そして、自分自身についても自分の考え方の芯があると、ぶれません。
例えば、負けない、誠実、勤勉、人と争わない、親切、慎重、などなどみんな何らかの自分ルール・理念を持っていますよね。迷ったら、あるいは自身の感情に負けそうになると、その自分のルールに立ち返って感情を制御しながら言動をコントロールしていると、思います。
こういう風に自分ルールに対して自在に感情を制御できるように、恐らく大人になるまでの20年くらいの年月、知らずに自身を訓練しているのだと、思います。
つまり、人が大人になると言うこと、成熟すると言うことは、立派な自己の芯を作ることなのではないでしょうか。
同じように仕事を遂行する場合にも自身の仕事に対する芯があると、品質高い仕事の成果につながり易いです。仕事に対する芯とは、品質、速さ、ミスをしない、特定の技術や行程作業など秀でているものを持つ、などなどです。良い仕事をするためには、自分の仕事の芯が必須です。
仕事の芯とは、拘りと言い換える事が出来るかもしれません。
それは、自分にとっては自信となり、他者からは敬意や信頼を受けることに繋がります。拘りをもって仕事をしている人は、側にいるとカッコ良く、頼もしいものですよね。
職業人として、技術者として成熟するには、立派な仕事の芯を育てることのようです。