第895回 「ロボットに仕事を奪われないためには」
新人の日報や、業務経験が未だ少なめのスタッフたちの報告書には、「もっと○○技術について勉強しなければない。」「一度経験した技術の応用が出来ないことが、課題だ!」「自分には技術知識が未だ未だ不足しているので、一層の勉強が必要だ!」などと、技術や知識の不足を重視する様子が書かれています。
職場への公的報告書なので、そういう記述でなければ、と思うのかも知れませんが、見かける度に少し気になります。
勿論、技術者になろうとしているのですから、技術や知識の習得は非常に大切です。等閑にすることはできませんので、技術や知識の不足を課題とすることは、真面目で望ましい姿勢です。
一方、仕事をきちんと遂行するには、技術や知識だけでなく、業種や職種を問わない普遍的な仕事遂行能力が、要求されます。
この能力に優れた人は、技術や知識が未だ未だ不足している場合でも、それなりの成果を上げることが出来ます。
そして、仕事遂行能力の高低は、経験が少ない人に限らずベテランにとっても、生産性や成果物の品質に影響を及ぼすものです。
この能力とは、具体的には自分の状態を的確なタイミングで明確に伝えることを、指します。組織やチームで業務を遂行するには、必須のスキルです。
組織やチームでは、メンバー一人一人の状態をみんなで共有し、補完し合うことが大切です。
そして、そのことがチームプレーの醍醐味であり効果なのです。ですから、組織やチームの力を活かすためにも、必須のスキルとなります。
例えば、言いにくい言葉である「出来ません。」、「無理です。」などを、的確に伝えることがチーム全体にとって、価値を持ちます。
最初は、言い出すのに少し勇気が要るかもしれませんが、伝えれば、必ず遂行指示者は、遂行できるよう手を差し伸べてくれます。
また、「出来ない」というのは負けの気がして、しゃにむに遣り切ろうとするかもしれません。
そうすると、無駄に時間だけを費やしてしまう場合や、我流のため正攻法とは外れた業務推進の結果、成果物の品質が劣ってしまうことになります。
同じように言い出しにくいこととしては、「休みます。」等も、周囲が忙しそうにしている時は、切り出しにくいかもしれません。
しかし、何より守るべきは自分ですので、勇気を出して口にすべきです。そして、あまりにつらい時は一時的に逃げることも、必要かもしれません。
周囲に自分を開示するとともに、自分が自分を十分に理解し、守ることが、組織やチームの為には大切です。
自分の状態を周囲に的確に伝えるためには、相手に伝える、相手が言うことを十分に理解するコミュニケーション力が、優れなければなりません。
十分に相手に伝えるには、豊富な語彙力、自分の話を組み立てる論理力が要ります。
勿論、早すぎず、遅すぎずの口調や音量なども適切な方が望ましいのですが、何よりも大切なことは、話の筋道が相手に解りやすいことです。
質問を投げる場合は、答えやすい質問にしなければ、適切な解が得られにくくなります。
ですから、論理構成力は、コミュニケーション力のキモとも言うべきスキルです。
素早く頭の中で論理を構築し、口に出すことができれば、切り返しにも有効です。相手の言うことを十分に理解するスキルは、読解力に繋がります。
最近の若い人たちは読解力がない、と言われていますが、文章から汲み取る行間だけでなく、対峙する相手の言動から汲み取るスキルも読解力(コミュニケーション力)です。
最近では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などと呼び、製造現場に限らず、オフィスの事務作業の自動化が推進され始めています。
つまり、私たちの仕事をAIが侵食し始めているのです。
これが進むと、恐らく我々のような業界でも、プログラミング業務などは、自動化が加速され、生産性の低いスタッフや会社は淘汰されていくことになるだろうと、想像します。
そういう時に卓越した、論理構成力、読解力、コミュニケーション力がある人や会社だけは、恐らく生き残って行けるのだろうと信じています。