第914回 「振り返り」
御堂筋にイチョウの葉が散り落ち、道修町筋の入り口に「新農祭」ののぼりを見かける頃になると、私は「今年も終りだ!」と、一人感傷的になります。感傷的というのは、瞬く間に過ぎ去ってしまったもう取り返しのつかない一年間の時間への惜別感でしょうか。
そして一方、強く焦りの気持ちが生じてきます。一年間、漫然と過ごすだけでなく、きちんと成果は上がったのか、どんな成果だったのか、などの様々が心に浮かんできます。
そして、私の心の落ち着く先は、「他人から見て素晴らしい成果ではないかもしれないが、
少なくとも目の前にあるやるべきことは、一生懸命に取り組んだ、そういう自分を褒めてあげよう。」と。
このようにして11月の中旬から12月大晦日までの1ヶ月半を、私は気持も、実際も、共にとても
忙しく過ごすのです。過ごした1年間に関しては、毎年今頃の時期に、私はこのように振り返りを行うのですが、1日単位でも同じような振り返りを行うことは、大変価値があります。
新入社員が入社すると、先ず日報を書くよう指示します。その目的は、いろいろありますが、
一番大きな目的は、毎日「今日の仕事の成果は何?」「もっと効率的に仕事を遂行するには?」
「どうやって生産性を上げるのか?」などについて、毎日の振り返りをしたのち、翌日に備えて、
新しい決意を行うためのツールとしての位置づけです。
現在、今年入社した新人たちは、毎日日報を作成提出していますが、うまく活用できているのだろうか、と少し心配になりました。
日報を読む限り一日一日の時間を大切にして、自らの成果に結びつけているのかどうかが、
不明だからです。
記述されている課題欄のベスト2は
「スケジュールの見込みが上手くいかないからか、進捗がスケジュールより遅れる。」
「報告や質問が下手だと指摘を受ける。どうやったら改善できるのだろうか。」です。
このベスト2の課題の解決へ要するテクニックは、ひとつです。
直面する課題を細かくブレークダウンするテクニックです。スケジュールに関しては、
これ以上は分析できないという程度の小さな仕事の単位まで、ブレークダウン(分析)する。
そして、与えられた期間の時間軸にブレークダウンしたやることのすべての業務を、割り付けます。割り付けには、2つの優先順位に対する考慮が必要です。つまり、価値として優先度の高いもの、
時間的優先度の高いものの、の2つの視点です。
この時注意すべきは、ブレークダウンした各仕事を遂行するのに、どの程度の時間を要するか、
というように考えては、駄目です。あくまでも許される期間の間に、仕事の数から算出した時間数を、各仕事単位に割り当てるのです。そして、できるだけスケジュールに忠実に仕事を遂行するには、
毎日の時間管理が重要です。
朝、業務に着手する前にその日の業務の時間配分(時間割)を決めます。「報・連・相」は、
朝一番に行います。その結果、昨日の先延ばしが具体的な作業として理解できるようになります。
一日の業務がバラエティに富んでいる場合は、あまり疲れを感じないかもしれませんが、
私たちのような机上仕事の場合は、休憩の取り方が生産性へ効果に影響します。
仕事の切れ目や煮詰まった時には割り切って休憩を取り、仕事への気持ちをリセットするのです。
業務終了前には、今日の振り返りを行います。振り返った後、今日の進捗を考慮しながら、
翌日の準備を行います。「報・連・相」において、うまく伝えられないのなら、チェックリストを
作成します。伝える順番と、内容で漏らしてはならないことをチェック項目に設定します。
キチンと伝えられるようになるまでには、何度も会話のダメだしを受けるでしょうが、
会話が上手になるには慣れが必要です。最初のうちは、話が伝わらず度々指摘を受けるでしょうが、めげずに慣れることに意識を向けます。指摘を受けることがもたらすのは、多くの体験だ、
良い体験を多く積むことができて幸いだ、というプラス思考に考えます。
こういう風に一日を過ごすと、とても生産的で成果の多い業務時間が過ごせます。新人の頃からこういう習慣を身に着けると、技術者への道は一足飛びですよ。