第943回 「思考のワナ」
昨日、スタッフが作成し、提出して来た資料に目を通していました。
この状態で完成と見做して、外部に出しても良いか、という問いかけでしたから完成品をチェックするような軽い気持ちで眺めていました。
記述されている詳細内容は、難度も推敲しましたので手を加える必要は、殆どありません。
一方、全体デザインが何処ということなくすっきりしない。外部に提出するための資料ですから、スタイリッシュとまでは言えなくとも、すっきりスマートにしたいものです。
恐らく、レイアウトの問題なのだろうと推察し、いくつかのレイアウトパターンに加工して再提出するよう指示しました。
再提出再度提出されたどのパターンもすっきりしたレイアウトではない。挙句には、自分でレイアウトをいじり始めました。
しかし、やっぱりスマートにならない。何故?何が悪い?デザインのプロでないから所詮この程度しかできないのか、と半ば自嘲気味にコーヒーブレイク。
でも諦めるのも悔しい。そう思いながら眺めていると、前触れもなく思考の枠がブレークされる瞬間が訪れました。
この1ページに込めた伝えたいことの優先順序は何なのか。語りたいメッセージは何なのか。
そのように原点に戻ってみると、レイアウトや文字の大きさの不調和が明確に見えてきました。
結果としては、自己満足でしかないかもしれませんが、比較的満足のいくデザインに収まったのです。
ところでこの徒労作業の原因は、当初の私には、あくまでも他者が作成した成果物の完成度合いを、チェックするだけの目線でしかなかったことにあります。その場合、既にある文字の大きさや配置は動かし難いものだ、という思考に束縛されていたからです。
それでも、すっきりしないレイアウトを何とか満足いくものにしようと、小さなケチ臭い変更を何度も試みて、徒労感を感じていました。
一呼吸入れたことで、目が覚まされ思考を原点に戻すことができ、既存の枠の束縛から外れて組み立て直した挙句、何とか本来のメッセージストーリーを表現することができました。
こういう体験は、意外と多いのではないですか。あるスタッフの報告にも似たような体験がありました。
A業務システムとB業務システムが稼働している業務現場です。因みにそのスタッフは、A業務システムに関与しています。
これら二つのシステムで生じたデータを連携しなければならず、A業務システム側がデータを連携するプログラムを、夜間に動かすような仕組みを作っているそうです。
夜間に動かすプログラムは、スケジューラーで起動するように設定しているそうです。時々そのプログラム起動に失敗して、データ連携が行われずに、その後のシステム運用に支障が起こると、いうことです。
起動が失敗しうる原因は、タイムスケジューラーの設定に関りがあるようです。データ連携のプログラムが円滑に機能するためには、二つのシステムが起動中でなければなりません。
ところが、時々B業務システムが自システム側の事情で不規則に計画停止を行うようで、その時間帯にスケジューラーがデータ連携プログラムの起動を行った場合に、失敗となります。
そこで、スタッフはB業務システムが絶対に計画停止しないだろう時間を選定し、スケジューラーに設定していたそうですが、今回その対策でも失敗したことによって、目覚めたようです。
相手側の条件に合わせようとするのではなく、A業務システム側では、いつまでにデータ連携できていればよいのかという思考によって、夜間でなくとも可能な対策を探ろうとしていると、言うことです。
私達はともすれば既存のことは、絶対条件であるという呪縛に囚われて思考をしがちになります。
でも、その呪縛を外すと、簡単に解決策や対応策が見えてくることは、多くあります。
世間をあっと驚かせるようなアイデアは、既存の型を突き抜けた発想から生まれていますよね。