第969回 「アジャイル思想」
私達の携わるシステム構築業務の開発手法には、いろいろなものがありますが、昔から一般的に取り上げられるものに、「ウォーターホール」方式と「アジャイル」方式があります。
この二つの方式は、比較して論じられることが多いものです。
なぜなら、二つは両極端の特徴を持つからです。
「ウォーターホール」方式は、開発工程の上から下流工程までを順番に遂行する方式です。
考え方も、手順も下降直線型方式です。
片や「アジャイル」方式は、言葉とおりに「素早いシステム開発」を目指します。
つまり、作りたいシステムを大まかに決めた後は「計画、設計、実装、テストの反復」を繰り返し、一気に開発を完了させます。
完成後システムをリリースした後もさらに、ユーザーやクライアントからのフィードバックをもとに、システムの改良を繰り返して行う流れです。
「ウォーターホール」方式の直線的な感じに対して螺旋的なイメージです。
人間の思考方法としては、どちらかと言うと直線的な「ウォーターホール」方式思考の方が取り掛かりやすく、一覧的に眺めやすい為修正しやすく、安堵感が得られるようで、ついつい直線的な思考をしてしまいがちです。
しかし、数日前の福島、宮城県で見舞われた地震のように突如災害に見舞われることもあります。
今回の新型コロナウイルスさえも、突然私たちの前に振って湧いて来た災害です。
こんな生命を脅かすような大きな災害でなくとも、日常生活や仕事の現場では毎日のように予期しない出来事が現れ、対処が要求されています。
このように、突然遭遇する出来事に最適な対処をするには、日ごろから「アジャイル」思考を身に付けておくことが有用です。
「今、緊急に何をしなければならないのか」ということが問われている時、スピードと質を両立させ、行動を伴う解を導かなくてはなりません。
例えば、会議で予期せぬ発言や返答を求められる、関与するシステムの障害が発生し、「兎に角何らかの効果的な行動をする」ことが要求される、そういうシーンはしょっちゅうあります。
そういう場合に役に立つのが「アジャイル」思考です。
「兎に角何らかの答えを出す」と言っても、「アジャイル」思考は、まるで無秩序で行き当たりばったり思考ではありません。
それなりにフレームワークと言うか、基本的構成要素はあります。
つまり、優れた直観力と水平思考が要です。
直線的な思考に慣れた人は、水平思考と直感を磨くことで人生時間における生産性が向上するはずです。
例えば、「アジャイル」習慣を身に付けると、物事の進捗スピードが捗ります。
会議で資料提出が要請された場合、会議後持ち帰って、暫く放置しておく、その後資料提出の期限ぎりぎりになって作成し始めるような癖のある人が、「アジャイル」習慣を身に付けると、会議の直後や会議場所で作成に着手でき、その場で完成させるなど、夢のように素早く行動できるようになるのです。