第971回 「思考方法について」
先般の社内会議では、新しく4月から開始することに決まった仕組みについての説明が行われました。
現行の仕組みの不都合な部分を、新しく運用する仕組みで是正しようとするものです。概ね現行の仕組みの不都合は、次の2つが原因で不都合と判断するものです。一つは、仕組みの運用を開始し始めた当初と、現状の環境条件が異なってきて不都合になったもの。二つ目は、永い運用期間の間に当初の運用規定が曲げられてしまい、歪んだ運用となっているため不都合と判断するものです。
ところが、現行の仕組みに満足をしている人たちの存在があります。満足している人たちは、当然ながら仕組みの改変へは反対です。議論には反対意見が出てくることは当然です。しかし、私が気になったのは、現行に満足する人たちが反対する論理の展開方法です。反対の論理は、歪んだ運用の部分に対する賛同であり、それをなくすことへの反対意見だったからです。
つまり、事実の目の前の現象だけを、判断の基準にしているとしか思えなかったのです。このことを今回の話題に取り上げようと思ったきっかけは、少し前に実施したアンケートです。アンケートの設問に自己のスキル向上課題がありました。その回答として、「論理思考力」をあげている人が多かったものですから、少し思考方法についての整理をしようと、思ったことが理由です。
そもそも人の思考の仕方には、この例のように目の前の事実から論理づける仕方と、全体や結論から論理を展開してゆくやり方があります。もっとわかり易い例えでは、目の前の短期的利益に目が行く考え方と、将来の利益を追求する考え方があります。そして、将来の利益を大切にする考え方は、目の前の利益にあまり囚われません。
どちらが良いとか優れているとかいうものではなく、その人の価値観の違いや考え方の癖です。しかし、どちらかと言うと過去において成功した人たちは後者の考え方をしているようです。例えば、有名な二宮尊徳の言葉に「遠くをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す。」と、いうものがありますね。
話を元に戻しますと、目の前に直面したことだけを論理の構築材料にする思考の場合は、全体の俯瞰や、結果と原因を追究する、将来の見通しを立てるような深い思考に繋がり難くなります。ですから、私は若い人たちには、出来るだけ全体を見る、単純化して考える、結論から逆行して考える、などの多面的考え方をして欲しいと、思っています。
特に、現象を単純化して考え、対応策などを具現化して考える、などの手法はかなり使い勝手の良いものです。この考え方の訓練をすると、自己の論理構成力の質を高めることができますが、他者への伝達力なども見違えるほど高まります。論理思考力の学習と言うと、なぜかしらロジカルシンキングのフレームワークのようなカタカナ文字が多いですが、もっと手軽に挑戦できます。