第977回 「目的を考える、理由を考える。」
新人研修受講中の新人の日報に書かれている研修の評価欄に、「ビジネスマナーなど、何故そうなっているのか、理由を知ったほうが覚えやすく実行しやすいと教わりました。マナーを守ることも大切ですが、相手の立場になり考え、敬うことのほうが大切と教えていただき、ビジネスマナーが身近になりました。」とありました。同様のことを数人が書いていますので、その日の講師はとても良い原理原則を教えたのだと思います。
確かに覚えるにしてもその理屈が理解できていると、細かいところでは多少の違いがあっても、大きくは外れずに、身に付けることが出来ます。
そして、その方が丸暗記に比べるとストレスフリーで確実に成果の高い勉強法になります。この目的を知る、理由を考えるということは、業務の遂行においても同様です。私達の業務の現場では、経験値の低い若いスタッフは、プログラムを作成することや、画面作りなどの単独作業を行うことが多いものです。
そういう時、指示を受けたことを素直にと言うか、単純な作業として遂行するだけのスタッフを、時々見受けます。単純作業にしてしまうと、作業中はあまり考えずに済むため思考停止状態をキープでき、一見業務の難易度が低くなるように感じられます。
しかし、そういう状態で業務推進をすると、遂行している当事者は「自分の責務は、指示をされたことを忠実にやることだ。」と、いう思い込みだけが残ってしまい勝ちです。そういう仕事遂行では、決して楽しいものにはならないと、思います。
その上、そういう単純作業の業務遂行は、深く考えることがなされなかった結果として、成果物の品質が劣る場合が多いものです。
例えば、プログラム作成だと、イレギュラーケースへの考慮不足や、プログラムが動作する環境には不適当である、などの指摘を業務指示者である先輩や上司から受け、不興を買います。また、受けた指示を守ることだけに集中していると、業務遂行に伴って「もっと良いやり方があるのではないか。もっと早くやるやり方があるのではないか。良い品質は何だろう、どうやって実現しよう。」などと考えることからも意識は、離れ勝ちです。
このように、言われたことを深く考えずに、そのまま遂行するだけでは、仕事はつまらないのです。それだけでは、品質が落ちることがあります。生産性を損なうこともあります。自己の成長の機会が少なくなります。挙句には、「やらされ感」ばかりが残り、仕事の達成感は感じられにくくなります。
一方、考えて仕事をすると、仕事は絶対に楽しくなります。良い品質の成果が出せるので達成感を感じます。そうすると、より高い品質を目指すモチベーションが高まります。成果に高い評価を貰えれば、当然うれしく楽しくなります。自分の工夫や成長が感じられると、もっと頑張りたくなります。楽しく仕事をするには、仕事の目的や理由を深く踏まえた上で、もっと良い仕事にするにはどうするべきかを、深く考えるのです。