第786回 「仕事を作業にしてはならない」
プログラム作成やシステム構築などの“ものつくり”業務遂行を行なう場合、
毎回課題となるのが、品質と納期のどちらを優先すべきか、です。
この課題は私の知る限り過去から延々と続いており、
恐らく我々の業界の永遠の課題であり続けるのかもしれません。
また、手作業による“ものつくり”全般的課題かもしれません。
高い品質を実現するほどに、時間を要します。
また、納期を守ろうとすると、時間の制限上雑な仕事になり、品質が落ちてしまいます。
アプリの利用現場に潜在する要求を掘り起こし、
それを満たすような行き届いたアプリケーションを自らの手で作り出し提供すべきである、
ですとか、是非とも提供したい、と新人の頃にはみんな熱く思いを語ります。
しかし、現実は毎回のプロジェクトにおいて、納期に追われ、
慌てた挙句に設計書に指示されていることすらも実装から漏らし、
レビューの度に指摘を受けるような散々な業務状況です。
慌てて修正したプログラムは、テストが不十分で、
修正を加えるごとに品質が劣化して行く様なことも生じます。
こういうネガティブサイクルに陥ったプロジェクトを見ていると、
なんだか仕事が仕事ではなくなって、ただの作業になってしまい大変寂しいです。悲しいです。
今日もそういうやり取りが起こっている社内プロジェクト現場を眺めていると、
少し前にニュースで話題になり、多くの国民の顰蹙を買った自衛隊の不祥事を思い出しました。
南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報隠蔽を組織ぐるみで
行なった、あの話です。恐らく、関与した自衛官たちも自衛官に成りたての頃、
つまりフレッシュマン自衛官のころは国民の命を救うことや、日本国の為に役だちたい、
という高潔な熱い思いや使命感に溢れていたと、思います。
しかし、毎日の業務に追われるだけになってしまうと、仕事への熱意や使命感が段々薄らぎ、
日々の業務を恙無く遣り過ごすことが目標の毎日に堕ちていったのだろうと、思われます。
そしてさらに、平穏な毎日を守るためには、物議を醸し出すことは避けるべきである、
と目を向ける方向が全く違ってしまいます。
その結果、一旦発してしまった発言を守るために、
組織全体で隠蔽せざるを得ない、と言う風に追い詰められていった。
なんとも情けない行為とならざるを得なくなったのだろうと、推測します。
これでは、最早仕事とは呼べないです。
こうなると他人事ながら、仕事は楽しいなんてものでなく、苦痛でしかないと、思います。
私は、原則仕事は楽しむものだ、と考えています。
そう発言しますと、「私は 仕事が大好きでそれだけが生き甲斐だ という心持ちではありません。
それ以外にも様々なことを出来ればと思います。」と、言ってきたスタッフが居ます。
仕事以外を楽しむのは構わないと、思います。
むしろ、楽しい事がたくさんあるのは、人生の時間が豊かでとても良いことだと思います。
一方、仕事は人生の長い時間を費やし行なうものですから、仕事に従事する間は楽しむべきですし、
従事する長い時間をただの作業だけで済ますと、苦痛になってしまいます。
また、仕事へは大人に成った人生の大半の時間を費やすものですから、
併せて自分を修養させるツールに利用するのが合理的だと、考えます。
4月になると日本中が新社会人で溢れます。私の会社にも、今年も新入社員がやってきます。
そういう新社会人の彼らにこのことを伝えたいと、思います。
新社会人になった今、感じている仕事への熱い思い、緊張感を、生涯褪せさせずに、
今の気持ちをキープし仕事に向き合い続けて欲しいのです。
そのためには、決して仕事をただの作業にしてしまわないことです。
仕事をただの作業にしてしまうと、その後の仕事時間中はつまらない、
無為な時間を過ごすことになり、長い人生の時間が大変勿体ないです。