第802回 「組織の規模」
私が新社会人デビュー時にたまたま入社した企業は、世界的にメジャーな大企業でした。
大企業に就職したのは、敢えて大企業を選んだのではなく、たまたまの成り行きです。
私自身が大企業志向だったのではありません。
だからと言って、大企業志向を非難しているのでもありません。
当時の私たち学生は、
好き勝手に選り好みするほど豊富な就職先に恵まれてはいませんでした。
しかし、振り返ると、大規模組織だから体験できたことが、たくさんあります。
何よりも、人が豊かでした。バラエティに富んだ多才・異才の人たちがたくさん居ました。
当時未だ若かった私から見ても、実務ではこの人どうなのかな?と、思える人も内には居ました。
でも、当時の大きな組織はそういう人たちをみんな吸収してくれていました。
さらに、管理階層も多重構造でした。
ですから、業務上の失敗や不始末なども階層を経て上位に届きますので、
段々希薄化されるようでした。我々のような下っ端社員には有り難い構造だったようです。
それでも、生真面目な新人社員の頃は、
自身の失敗や不始末にどうしようもなく落ち込むのですが、そういう状況を救ってくれるのは、
バラエティに富んだ周囲の人たちでした。
日頃は、真面目に仕事をしているのか?と思われる組織の厄介者のような人が、
親身で慰めて(?)くれました。慰め、というような正攻法ではありません。
仕事や上司、会社の悪口、挙句の果てには人生の悪口など、
発想が一転するような特異な遣り方でした。もう笑うしかない、そんな具合でした。
今になって思い起こせば、いろんな人の大勢いる組織に在籍したこの時代に、
私は人生への処し方を学んだようです。
翻って、現在私が在籍する組織は、極小さな規模組織です。
この組織にいる人たちの個性も、非常に豊かですが、
バリエーションが多彩だというものではなく、同じようなタイプの人が複数人居るものでもありません。
ですから、自身と同程度の価値観や世界観を持つ人を見つけるのは、
難しいかもしれません。そういう意味では、
若い人たちには自分のロールモデルを見つけ辛い、という不幸な現実があるかも知れません。
また、自身の失敗や不始末で落ち込んだ時、
私が癒された種類の優しさを施されるというような体験も、少ないかもしれません。
さらには悩んだ時、困った時、共に共感してくれる人を見つけ辛い、
と言うこともあるかもしれません。でも、そういう環境故の利点があります。
つまり、組織のサポート力不足の故に、独り自力で戦っていかなければならないことに、
度々遭遇するのです。
何が何でも自力でやらなければならない環境下では、頼れるのは自分だけです。
それ故、何よりも自立心が鍛えられるのです。これは、とても大きな利点です。
何故なら、新社会人になってからその後死ぬまで続けなければならない社会人人生において、
幸せに暮らすために何よりも必要なのは、自立心だからです。
さらに、自立力が強化されると、自分の裁量でやってみたい気持ちが大きくなります。
それに挑戦できるのも、小さな規模の組織ではOKです。
何故なら経営側は、いろんなことに挑戦したくても人材が豊富でないため、
挑戦してくれる人を渇望しています。ですから、たくさんのことに挑戦させてくれます。
それが目的で、最近は敢えて中小企業に就職を希望する優秀な学生が、居たりもします。
そして、何よりも大規模組織と小規模組織の違いは、メンバーの一人一人の組織への貢献度合いです。
大規模組織のメンバー毎の貢献度は、全員を均しても100%には満たない(一人の人が持てる力の内、仕事を通じて組織に発揮・貢献する力の割合)と、感じていました。
一方、極小規模の組織では、メンバー一人のサボりも欠落も許されません。
誰かがサボったり、欠落したり、緩むとそれは他の誰かの背に負われてしまいます。
それ故に、小さい組織のメンバーは遣り甲斐、自己肯定感が感じられるはずです。
小さな組織で働くメンバーたちは、自分が居なければ、自分の働きがなければ、
会社組織は立ち行かない事実を理解し、それを担って頑張る自分に誇りを持って、
緩むことなく緊張して業務に励んで欲しいと、思います。