第814回 「情報開示要求」
納期が契約に必須条件となる受託開発業務を遂行している私の会社では、
慢性的に納期への危機感が漂っています。
納期への危機感に染まってしまうと、時間ケチケチ精神に堕ちてしまい、効率性・ショートカットなどのキーワードに敏感になり、人間としての品性が低化してしまうように感じます。
現在も、納期への危機を感じているプロジェクトがあります。
対策としてヘルプメンバーに参画してもらいました。
ところが、ヘルプメンバーの彼は、自身がこなさなければならない業務のスケジュールや、詳細業務について不透明なまま、その日暮をしていると言うことです。
つまり、その日その日の業務指示に基づいて業務遂行を行っているだけのようです。
こういう状況に陥ったら、とても非効率です。先ず何よりもメンバー当事者は、困りますね。
この先、自身はどう振舞うべきなのか、判断ができません。
当然、その日の指示受け済み業務をどのような状態で終了すべきか、
残業して完了させるべきなのか、休日の出勤は必要なのだろうか、などの行動判断にも困ります。
当然、翌日や以降の自身の行動も不確かで、休日の行動すら決めることは出来ません。
友人や家族との約束も出来ません。
「働き方改革」の逆行です。
そして、非効率の影響を受けて陥るのは、プロジェクト遂行、特に品質などへ負の影響です。
メンバー自身自らが判断する、決断することが出来ない条件下におかれるということは、
人間らしい知恵・知性を発揮する条件が制約されます。
そういう条件下にあると、大概の人間は面白さや興味などの知的刺激が触発され難くなります。
それに伴い、仕事遂行に感じる達成感・幸福感が感じられず、
モチベーションや使命感・責任感は当然のごとく乏しくなってしまいます。
こういう困った事が一杯の「不透明状況」を解決するには、自主的に情報を取得するしかありません。
つまり、自らの困った状況を説明し、その後に情報の開示要求をするのが順当な手段です。
そういう行動を摂るよう奨めても、「そうは言っても・・・」と、二の足を踏んでいます。
何故聞かないのか?と、尋ねますと、
情報を持つ相手が顧客や上司のように上位者の場合、自分から要求するのは憚れる、と言います。
一見、自分より上位にいる人には要求し難い、と言う言い分は、
謙虚だな、そうだよね、と同調されそうですが、それは間違いです。
仕事遂行上での立場が上位にあるように思える人たち、例えば発注元の顧客担当者やプロジェクト遂行の上位スタッフ(プロジェクトマネージャーやリーダー)は、プロジェクト遂行の責任を負う責務を果たす為に、遂行させることに伴う権限を与えられているだけです。
人間として上位にあることや、並はずれて優れた人と言う定義とは異なります。(勿論、優れた人はいますが・・。)
仕事遂行上の上位者は、自らが遂行し、完成させなければならない業務遂行への責任を負います。
何としてもやり遂げるために必要な権限が与えられ、
必要に応じて行使する、行使できる立場にあるだけなのです。
同じことは、各担当メンバーにもいえます。
メンバー夫々には責務と役割があり、自らの役割責任を全うさせるためには、
そのための条件整備が必須です。
自らが、遂行する業務行動について不明や疑問がれば、直ちに解明しなければ責任ある業務遂行は出来ません。プロジェクトメンバー各々が自らの責務や役割を自覚し、チームの目標を共有したならば、品質の高いプロジェクト完遂が可能なのですが・・。
何故かプロジェクト運営は理論通りにはなかなかうまくいきません。恐らくメンバーひとりひとりの性格特性が正しい理論に絡まってしまい、理論通りの 運営を損なわせるからかもしれません。