第830回 「見通しを考える」
新入社員の日報に書かれているのは、「進捗を予定通りに進めることができません。遅れる原因は、・・・・・。」のような報告です。
新人研修が終わり、実務に就いてからほぼ毎日のように提出される日報の内容は、スケジュール遅延に関する懺悔と悩みが綿々と綴られています。このようにどうしたらスケジュールを守ることができるのか、という悩みは、新入社員に限らず若手スタッフが抱える課題の多くを占めるようです。
鬱々とした顔つきが気になり声を掛けると、「スケジュールが守れずどうしたらよいのか、に悩んでいる」と、応えるスタッフが往々にしています。また、急に割り込み業務遂行を指示されることがあり、元来遂行中の業務遂行スケジュールとのバランスが、不安になってしまうと、言う苦情を聞くこともあります。
そして、実害が発生するのは、掛け持ち業務遂行の場合です。
掛け持ち業務遂行の場合、当事者の価値観に左右され、業務遂行が偏ります。
当事者が優先度を高くする側に、一方的に熱意は集中し、もう一方の遂行は滞り勝ちです。
こういう現象は、日常的に私の会社でも見受けられます。
例えば、情報セキュリティマネージメントシステムを運用するために、ISMS委員会なるものを設置し、全スタッフが何らかの役割を担っています。ところが、各役割担当者が十分に機能していず、システムのサイクル期間中の運用が、滞りがちです。
そして、その言い訳として「実務が忙しい」と、言います。もしかしたら、実務が忙しい、と言う言い訳によって請う公然とISMS業務から解放されると、言う思い込みがあるのかもしれませんが・・。
ところで、こういうパターンの人たちの仕事遂行への向き合い方は、正しく向き合っているのだろうか、少し気になります。
つまり、目の前に置かれたことをひたすら黙々とこなすような仕事のやり方、だとしたら少し修正が必要な気がします。仮に、そういう仕事の進め方を行っているのでしたら、正確にスケジュールに沿った業務遂行にはならない場合が多い、と思います。
恐らく、たまにはスケジュールより速くなることがあるかもしれませんが、概ね遅れることの方が多く、上手くいって何とかバタバタしながら、スケジュールを守る程度です。
割り込み業務についても、眼の前のことを黙々とこなす仕事のやり方では、スケジュールを立て直すのに(取り戻すのに)大きなエネルギーを要します。
そして、掛け持ち業務遂行に関すると、基本的にエネルギーは目の前にあることにしか向けられていません。よって、所詮掛け持ち業務遂行自体が無理なのです。
こういう大変な状態に陥らないためには、いつも「見通しを持つ、見極める」ことを習慣とすることを、おススメします。そうすると、もっとこなれた仕事遂行が可能だ、と思います。
遂行スケジュール提示を受けると、業務が完遂する状態をイメージしながら逆算して日々の業務遂行や環境を見極めるのです。
そうすると、イメージする状態から外れそうになると自分のイメージのアラート機能が働きます。つまり、手遅れになる以前に手が打てるのです。
スケジュールに追われるより、先手が打てるのですから、気持的にはずいぶんラクです。割り込み業務の指示を受けた時にも、全体の見通しの中の今の瞬間を把握できますので、割り込みを引き受けるのか、断るのかの判断が時間を掛けずに可能です。
一番厄介な掛け持ち業務遂行問題も、全体見通しの中で自らの行動や業務遂行をデザインできます。
よって、眼の前にあることを遂行している内に時間切れになってしまった、しかし、気持ちだけはやらなければならないと、言う強迫観念に脅かされていた、なんていう惨めな状態は回避できます。
つまり、見通しを持つ、ということは、仕事遂行の質を上げる為に、自らの業務遂行を自らがデザインすることなのです。