第831回 「脳のクセ」
今週の旬の話題、なんと言っても冬季オリンピックは外せません。日本中が沸いていますね。
何より日本選手の活躍ニュースが、私達に大きなパワーを与えてくれています。
私は、ニュースで選手達の活躍のシーンを見ていました。ですから、日本選手メダル獲得の映像にもそれなりの感動はありましたが、やや冷め感がありました。
ところが、先週の土曜日は、たまたまなのですが、スポーツジムで羽生結弦選手が演技しているシーンと、それを観戦して居る人たちを目にしました。テレビの前にトレーナー姿の大勢が棒立ちになり、観戦していました。
傍目には始め異様な空気を感じたのですが、流れから私も一緒に佇んで仲間入りをしました。羽生結弦選手のあの息を呑むような華麗な演技の最中、テレビの前の人たちは息を止めたようにシーンと見入っていました。そして、縁起が終了すると、割れるような一斉の拍手と歓声です。
その熱気、会場から遠く離れた場所ながら現場に居るような臨場感、みんなの一体感を体感しました。そして、成績が発表された瞬間のテレビの前の観衆から沸き起こる歓喜は、私に厳粛ささえ覚えさせるようでした。この感動は、とても筆舌に尽くせないです。
一方、スピードスケートの小平奈緒選手の金メダル演技は、残念ながらニュースでしか見る事が来ませんでした。それでもインタビュー報道における小平奈緒選手は、小柄な選手がとても大きく映り、感動で涙が出そうでした。
メダルを報じる新聞やテレビなどのメディアは、メダルを手にした選手たちのメダル獲得までの頑張りを、伝えています。羽生結弦選手は、同じ年頃の若者たちが楽しんでいる間、脇目もふらず一心に練習に励んでいたようです。その証拠に、コンサートやスポーツ観戦には一度も行った事が無いということです。尤も、その挙句、自らは音楽やスポーツ観戦から生の感動を受ける機会はなかったけれど、自らが感動を与える人になり、偉業を成し遂げたようです。
また、小平奈緒選手が質問を受けて答えたキーワードの「求道者」、という言葉は小平選手の生き方を、まるで象徴しているかのようです。小平選手はさらに、「続けるとドンドン面白いことが出てくる。理想のすべりを身につけたと思った時には、もう一つ上の理想のすべりが見えるようだ。だから、もっと高みを目指したい。」と、語っています。次はもう一つ上の高みを目指す、ということは羽生選手も言っています。
金メダル獲得の二人の選手について述べましたが、残念ながら今回は金メダルに届かなかった他の選手達も、努力の程度や精神は全く変わらないと、思います。多くの選手は、今の瞬間から、次のチャンスに目を向け始めているのです。コンマ数秒、小数点以下点差で勝敗が決まる彼らは、ほんの僅かなことが勝敗の分かれ目になります。ですから、細心の準備に心を配り、自らを制し続けています。つまり、彼らは自らの目標達成だけを焦点に据え、極ストイックに自身を律しているのです。
自分には特別の才能などないし、そんな大変なこと出来ない!と、言い普通に暮らしている私達です。そういう凡人には到底真似出来ないと、思うかもしれません。
しかし、そうではないようなのです。私達の脳には、苦労を乗り越えるように仕向けられたクセがあるようです。つまり、人間の脳は「苦労の多いこと、大変なことを乗り越えることは価値が高い」と、評価するクセを持っているようです。ですから、大変な努力の結果、やっと栄光を手にした羽生結弦選手や小平奈緒選手は、金メダルに到達しても、これで終わりなのではなく、次の目標に向かって更なる高みを目指したい、と言っているのです。
毎年年頭に目標は立てたけれど、挫折クセを持つ、と言う人は、一度本気で頑張ってみては、どうでしょう。きっと、達成する事がクセになるかもしれません。そんな嬉しい習慣を身に付けることを期待しています。