第873回 「フランスのイエローベストデモ」
新年明けましておめでとうございます。年末年始の休暇が長かったところも多いようですね。
私の会社も、昨日の7日からが仕事始めです。昨今の私たちは感動感性が鈍っているのか、お正月と言っても格別新たまった気分にはならないようです。
形式的に「年が改まりましたので、新たな気分で仕事に励みます。」などと、それらしきことを口にします。しかし、それは社交辞令として新年のこの時期に慣用的に使用する言葉に過ぎないようにすら、感じます。
一方、初詣の人々で寺社は大層賑わっています。この現象から推測するに、正月もクリスマスもハロウィーンも、みんな同等レベルのイベントごととして捉えられているようです。
何でも楽しむきっかけにしてしまう、宗教的な意味合いどころか神聖さすら、意識に上ることもない。こう書くのは、そういう現象を非難しているのではなく、こういう感性の在り方が、恐らく昨今の政治へのポピュリズム(大衆迎合主義)運動の精神性に重なるのか、と思うからです。
昨年末のある忘年会で、今後の経済はどうなるのだろうか、50年後に自身が所有している株価はどうなっているのだろうか、などが話題になりました。忘年会の参加者は現状と先行きを憂えるばかりで、誰も50年後の世界経済について解説した人はいなかったのですが、私はこの話題がその後気になっていました。
何故なら、昨年の冬に入ってから各国のポピュリズム風潮が、一層強くなっていると感じることが多かったからです。
フランスのイエローベストデモは、今では革命を起こしかねないと識者たちの憂いを買っています。イギリスのEU離脱に対する首相の行動に向けて反発する国民の様子、ドイツも公正であろうとする首相に対して自国民優先意識の高まりなど、などの如くです。
この現象の根源には「経済の成長から減速への転換があると、読み取れる」と、フランスの経済学者がテレビのインタビューで述べていました。
また、年頭に当たっての今後の日本経済の課題として、国内の著名な経済学者も、同様の発言をしています。この説明は、私にはとても腑に落ちるものです。さらに補足するなら、過去経済成長を引っ張ってきた産業は衰退傾向にあり、新たな産業が主役になりつつあるということが、減速の要因として大きいのだろうと、思います。
ポピュリズム運動の中心となっているのは、各先進国の中でも人口構造の中心にある中産階級の人たちです。製造業などに従事して来た中産階級の人たちは、過去には順調に発展する経済成長の恩恵を受けてきました。
ところが、情報が価値を持ち経済の中心に躍り出るようになると、製造業などのアナログっぽい仕事は、陰りが見えてきました。そういう人たちが自分たちの繁栄を取り戻そうと、運動に励むのです。アメリカのトランプ大統領の支持者の例が顕著です。
ところが、ポピュリズムには思想というか、その先の計画や夢がありません。
やみくもに自分たちを守ることをスローガンに掲げ、大勢の意見に迎合するのみです。これだけでは、住み良い社会は実現しません。本来民主主義は、全員の意見を吸い上げて、大多数の意見に集約してゆき、質的向上を図るものだと、思います。
そういう意味においては、ポピュリズム運動は民主主義的行動にも整合しないことになります。
このことは、すべてに当て嵌まります。
「それが実現したら、どういう素晴らしい未来が実現するのか」という行動の結果に対する夢がなければ、労力を投入して行う価値が見出せません。
仕事も同様です。
しんどい仕事、面倒くさい仕事も、質の高い成果を遂げ、それに対する外部の高い評価を期待するから、楽しいのです。
今年も、人に誇れる仕事に励み、楽しみたいと、思います。