第875回 「あなたはどのタイプ?」
週末のジムでランニングマシン(私が利用するのは、大概ウオーキングマシン仕様になりますが・・)を利用しながら、「ながら」テレビ視聴をします。
じっと、一人黙々とマシンの上で歩き続ける退屈を、誤魔かすことが、「ながら」テレビ視聴の当初の動機でした。しかし、そのうちに興味深く視聴できる番組が放映されている時間帯に、マシンを使用する行動ルールができ上がりました。
この週末も、いつもの番組を見ながら、ダラダラ、マシンの上を歩いていました。すると、興味深い話題が耳に入って来ました。
話題のテーマは幸福観です。つまり、成人年齢を迎えた直後程度の若者たちと、彼らより2~3世代上の世代の人たちとの幸福観の相違についてです。そう言えば、最近良く聞かされるのは「最近の若い人は、車を持ちたいとも思わないようだし、物を所有したいという欲求が乏しいようだ。」「会社で出世するよりも定時に帰社し、親しい人と過ごすことや、好きなことに時間を使うような生活を望むらしい。」「生活するのにあまりお金をかけず、お金が必要な分だけ働く人たちもいるようだ。」など、などです。
こういう価値観は、旧世代の人たちにはとても共感できず、理解すらできないようです。
でも、この暮らし方は、反面日々の生活の時間を大切にする暮らし方です。ある意味、とてもぜいたくで自分の時間をゴージャスにするものです。
但し、過去の世代では、こういう考え方、暮らし方は、功成し遂げて、あくせく働かなくても十分暮らしていけるお金が手に入った後の楽しみ、という風に考えられていました。
ところが、現代の若者たちは、思考が合理的です。必死になってあくせく働く間は、多くの楽しみを犠牲にしなければなりません。楽しみの中には、若い時やその時しか味わえないものもあり、働くことを優先するとその楽しみを捨てることになります。
その挙句、功成し遂げられる可能性は、100%ではありません。
そういうパフォーマンスの悪い選択をするよりも、現状の生活レベルに満足すれば、人生が楽しめる、と考えるのでしょうか。物の購入基準であるコストパフォーマンスに対する感性と同じ感性のようです。
こういう価値観を刹那的と指す大人(旧世代)がいます。
でも、刹那的というのはある意味、その瞬間、瞬間に充足感を味わうということでもあると思います。
人が達成感を感じた後の反応は、多様なパターンがあります。
何かを成し遂げると、次は今回成し遂げた対象への自己の達成レベルの上昇を追求し、レベルが一段上がる都度、達成感を感じてゆくタイプ。そもそもの目標設定ができており、その目標への目線が一直線である故、都度の小さな成功には一喜一憂しない、むしろ目標に対して最短時間で到達しようと思い、途中過程はできることなら素早くやり過ごしたいタイプ。などなどです。
後者のタイプは、目標が達成された時、初めて充足感を、感じるのでしょう。充足感を感じることができれば、どういうパターンであれ十分に幸せなのだろうと、思います。
一方、どちらかと言うと最近の若者は前者のタイプが多く、大人たちは後者のタイプだった、というのが、大人たちの感想のようです。
その理由を大人たちは、社会全体が豊かで便利になり、戦うべき課題や相手が曖昧になってきていることが、若者たちを前者にする原因だ、と言います。確かにそんな一面はあるかも知れません。
一方、私はそういう人たちの存在は昔もあったのだけれど、皆の目線が為政者や社会の目指す方向にだけ向いていたので、気づかなかった。
しかし、現代では、インターネットやSNSなどの情報伝達環境の進化が、彼らの存在を知らしめることの追い風となった、と考えます。
つまり、過去も現在も人の多様性はあまり変化しないのだけれど、情報開示への障壁が低くなり、それぞれのタイプのみんなが、自己の主張を開示するようになったことが、人の多様性をみんなが知ることへ大きく影響しているのではないのか、と考えるのです。
ですから、「今の若い人は・・・であるから・・・」と、いうような決めつけをしても何の解決にもならないと思いますし、そもそもそれは間違いのように思います。
そうは言いながら、多様なタイプの人たちと一緒に働くチーム運営は、かなり難しいものになります。多様なタイプの人たちが存在する組織は、マネージメントの工夫(巧拙)次第で組織の成果に大きな差異が生じます。
ですから、このように思考錯誤の工夫を要する複雑な仕事であるマネージメントの仕事は、AIには取って代わることのできない仕事かもしれません。
でも、思考錯誤の工夫を整理分類し、AIに教えたら、やっぱり取って代わられるかもしれない・・・・。