第876回 「働く時間を削って、成果を変えない」
あなたは、新聞を読むときにどの記事から読み始めますか?
最近の人たちは新聞を読まない、から答えられないでしょうか。
では、ビジネス書などの本を読むときは?
これも読まないので答えられませんか?
小説はどうですか?小説も読まない?
だとしたら、私は話を切り出すのに悩むのですが・・。
例えば、手引書や技術書などを参照する時は、必要な情報が書かれているページを繰って読むのが普通ですね。それでも理解できない時は、関連しそうな章や内容を目次から拾い、そのページを読みます。つまり、書籍1冊を初めから最後まで丸ごと読むことはしませんね。
これは、あくまでも欲しい情報を参照する必要がある場合ですが、必要な情報を短時間で得るための普遍的な知恵ですね。
私は、一般の本も同様の読み方をします。先ず、「はじめに」や「あとがき」などで、作者や訳者のその本への意図や背景を掴もうとします。
次に目次を開いて、興味を引く章、キモとなる章を読みます。それだけでは推測不能な文脈、不明な単語・言葉が出てくると、前のページに遡りながら流し読みをし、そのことの説明が書かれている個所を拾います。
最後に、目を通していない残りのページを、流し読みして終了です。
こういう読み方は、書き手に対しての尊厳を損なうようで、まことに心苦しい気がします。本来ならば、一冊、一冊を丁寧に読むべきだとは思うものの、時間の関係上、ついついそういう読み方になります。一冊、一冊丁寧に読むほうが、知識や教養の付き方は大きいとは思うのですが、タイムパフォーマンスが、このほうが良いように思えます。
新聞も同様です。先ず、1面の大見出し・中見出し(セットで目に入ります。)を見ます。
しかし、1面のトップはテレビのニュースで流していたりするメジャーな情報が多く、新聞で読むまでもないことが多いですから、見出しだけで飛ばすことが多いです。時々、「えっ」と思うような大見出し、中見出しに出会うと、小見出しの要約文を読みます。
よっぽど関心が高い場合を除くと、小見出しだけで十分内容は理解できます。興味のある関連記事が他の面にも載っているようでしたら、その記事を探します。
同じ要領で、大見出し・中見出しを眺め、時々本文を読むのです。本文を丁寧に読むのは、特集のシリーズ物です。ニュースと言うより、各新聞の見識のような記事が多く、見出しで読者を煽るようなことをしないため、丁寧に読まないと、理解できないからです。
また、ニュースのように直ぐ役に立つ情報ではないですが、脳の栄養剤のような記事も多い気がします。
最近、「働き方改革」の言葉とセットで使われるのが、「仕事の効率、生産性向上」です。何故なら、働き方改革は、「働く時間を削っても、成果は変えられない」のですから、それならば一層効率を上げるしかないのです。単位時間内の効率を上げるには、最初のページから最後のページまで丁寧に読み進める読書のような仕事の取り組み方をしていては、向上の余地がありません。
進捗スケジュールを立てるにしても、算出根拠は時間当たりの自身の読書実績くらいです。効率化の方策がありません。
「働く時間を削って、成果を変えない、むしろ大きくする」には、制約時間を前提として、その制約時間内に、どれだけ多くの働きを取り組めるかを考えるのです。
「多くの働きに取組む」というのは、量の多寡ではなく、価値の多寡を考慮すると、いう意味です。
効率化のポイントは、優先順位、無駄のカットですが、優先順位については慎重に取り組まなければなりません。優先順位には価値の重要性と時間的に急ぐ、と言う2つが混在して受け取られ勝ちです。ところが、それぞれを分別して、対処を考える必要があるのです。
時間的に急ぐけれども大して重要でないことは、他者に頼み自身の仕事量を削るような工夫などです。また、優先順位が低いものは、後日に延期調整ができるかもしれません。
そうして、制約時間内に遂行が可能な価値の高い重要な仕事だけに絞り込んで、成果の高い仕事をやり遂げるようにするのです。
ですから、仕事の効率、生産性向上に取り組むには、目の前の仕事を只管やっつけるのではなく、事前計画・準備が必要になります。