第967回 「ヒアリングの作法」
朝のニュースで「今日は節分です。」と、言っています。
えっ、節分は2月3日のはずなのに ? と、2月3日節分に対して寸分の疑いも持たなかった私は、出勤支度の手が止まりました。
でも、正しいようですね。
地球の公転周期に要する時間を4節季に区切る時に生じる端数調整のため、変則が生じ、今年は2月2日が節分らしいです。
節分と言う誰でもが馴染んでいる当たり前の日常的なことすら、その正しい意味や成り立ちを知らずに、2月3日だと刷り込んでしまっていました。
私にとって世の中には、まだまだ知らないことの方が多いのです。
今朝のミーティングでクライアント様への要件ヒアリングの際の心がけが拙いのではないかと、若いスタッフがリーダーから指摘を受けていました。
スタッフは、クライアント様へ行う質問を、遠慮がちに切り出しているように見受けられる。
申し訳ないという遠慮の気持ちで接している限り、正確な情報を入手し辛い。
正しい要件を正確に聞き出すことが出来ないと、正しい提案や製造物を提出することはできない。
そのために、クライアント様に協力いただくのは、決して遠慮すべきことではない。
と、いうような意見です。
尤もです。
どんな仕事であれ、仕事(役務や成果物)を提供する側と、その仕事の成果を提供される側の有難さ程度は、互角だと私は考えます。
「仕事をさせていただいてありがとう。」一方は「提供してくれてありがとう。」の気持ちが基本です。
ですから、ヒアリングに遠慮の気持ちは不要です。
しかしながら、ヒアリング相手の貴重な時間を費やして頂くのですから、最も効率的で効果的なヒアリング推進を心がける必要はあります。
また、ヒアリングの結果を一切無駄にせず、正確に提案や成果物に実現させる責務もあります。
そういう風に言うと、事前の準備にたっぷり時間を投じ、独断で判断したガチガチの提案内容を資料にまとめ用意して臨む人もいます。
そして、クライアント様に向き合うと、早口で専門用語を並べて、滔々と説明しているつもりになっています。クライアント様を含む周囲は、その話は何だったのか飲み込む間もなく終わってしまうのです。
その上、ガチガチの提案は、思い込みによる独断に依っており、現実からだいぶ離れていることが多いものです。これでは、拙いですよね。
業務で行う要件ヒアリングは、工程毎に目的が異なりそれに沿ってスタイルが異なります。
一つは、クライアント様が思っている理想を引き出す段階で、初期の工程で実施します。
二つ目は少し後工程において、具現化するために不足している情報を穴埋めする目的で行われる場合です。
これらのスタイルは、工程毎に使い分けなければなりません。
初期のヒアリングは、あくまでもクライアント様の思いを引き出すための工程です。
お互いよく知らない、対処が分からないところから一緒に考えましょう、と臨むことです。
素直に知らない、分からないという投げかけが、クライアント様が自身の思いに本気で向き合うきっかけを作り出す場合もあります。
そして、工程が進むと、ヒアリングによって具現化情報を得なければなりませんので、叩き台としての提案などを準備して、具体的な話を進めることが必要です。
いずれにしろ基本姿勢は、「一緒に考えましょう、クライアント様は業務運用や操作者の立場目線で、我々技術者は仕組み(システム)構築者の立場目線で一緒に考えて、良いシステムを構築しましょう。」が、ヒアリングへ臨む心構えです。